湿疹
湿疹とは、皮膚の表面に赤みやブツブツ、水ぶくれなどの異常が生じる皮膚トラブルの総称です。皮膚が炎症を起こした状態を指し、じんましんやかぶれなども湿疹の一種に含まれます。湿疹は皮膚科を受診する患者さんの中でも特に多く見られる症状で、子どもから大人まで幅広い年齢層に発症します。症状の程度や治療期間はさまざまで、急に発症するケースもあれば、慢性的に繰り返す場合もあります。
湿疹の原因
湿疹は、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激や細菌、アレルゲンの影響を受けることで発症します。原因は湿疹の種類によって異なり、接触皮膚炎ではアレルゲンに触れることで発症しますが、そのアレルゲンの種類は非常に多岐にわたります。アトピー性皮膚炎の場合は、アレルゲンやストレスなど複数の要因が関与し、尋常性湿疹は細菌感染や乾燥が原因となります。脂漏性皮膚炎の場合は、皮脂の過剰分泌によって引き起こされることが多く、皮膚の常在菌の影響も考えられます。
湿疹・手湿疹とは?
手湿疹(主婦湿疹)は、日常生活の中で頻繁に水や洗剤、化学物質に触れることで皮膚が刺激を受け、炎症を起こす状態です。特に、理美容師や看護師、調理・炊事業に従事する方など、水仕事が多い職業の方に発症しやすい傾向があります。
皮膚の乾燥やひび割れ、強いかゆみ、赤みなどの症状を引き起こし、症状が悪化すると皮膚が剥がれたり、亀裂が入ることもあります。若年層の女性に多く見られますが、アトピー性皮膚炎の既往がある方や、長時間刺激物に触れる機会が多い方は特に注意が必要です。
角化型手湿疹
角化型手湿疹は、中年男性に多く見られ、手のひらの角質が剥がれ落ちるのが特徴です。進行すると皮膚が硬くなり、亀裂が生じることもあります。
進行性指掌角皮症
進行性指掌角皮症は、指先や指の腹が乾燥し、ざらつくようになり、ひどくなると指紋が消失するほどの症状を引き起こします。
貨幣状型手湿疹
貨幣状型手湿疹は、手の甲に丸い湿疹が現れ、強いかゆみを伴います。刺激性皮膚炎やアレルギー性接触皮膚炎、アトピー体質の影響も関与すると考えられています。
再発性水疱型(汗疱型)手湿疹
再発性水疱型(汗疱型)手湿疹は、手のひらや指の側面に小さな水ぶくれが多発し、左右対称に症状が現れます。夏場に悪化しやすい特徴があり、慢性的に繰り返すことが多いです。
湿疹にも種類があります
湿疹は、その原因や症状の現れ方によっていくつかのタイプに分類されます。
手湿疹(主婦湿疹)
手湿疹は、日常的に水や洗剤を使用する機会が多い方に発症しやすい皮膚疾患です。手のひらや手の甲、指先、手首に赤みやかゆみが現れ、ひどくなるとひび割れや皮膚の剥がれが生じることもあります。特に、洗剤や消毒液に長時間触れることで皮膚のバリア機能が低下し、湿疹が慢性化する傾向があります。
乳児湿疹
乳児湿疹は、生後数か月の赤ちゃんに見られる皮膚トラブルの1つで、特に頭や顔に症状が現れやすいのが特徴です。赤みを伴うブツブツやかさぶたのような症状が出ることが多く、頭部に発生した場合には、黄色みを帯びたフケのようなものが付着することもあります。
汗疹
汗疹は、汗の排出がスムーズに行われず、汗腺が詰まることで皮膚に炎症が起こる状態です。特に暑い季節や発汗量が増える環境では発症しやすく、小さな水ぶくれや赤みが現れます。
汗疱・汗疱状湿疹・異汗性湿疹
汗疱(かんぽう)や異汗性湿疹は、手のひらや足の裏、指の間に小さな水ぶくれが発生し、それが繰り返しできては消えるという特徴を持つ皮膚疾患です。水ぶくれは比較的深い層で発生するため、破れにくいのが特徴ですが、かゆみや痛みを伴うこともあります。
発症の明確な原因は解明されていませんが、多汗症や金属アレルギー、ストレスなどが関与している可能性が指摘されています。
皮脂欠乏性湿疹
皮脂欠乏性湿疹は、肌の乾燥が進行することで発生する湿疹の一種です。加齢や空気の乾燥、過度な手洗いや入浴による皮脂の洗い流しが原因となり、肌のバリア機能が低下することで湿疹が起こります。
かゆみを伴うことが多く、無意識に掻いてしまうことで皮膚が傷つき、症状が悪化する場合があります。冬場やエアコンの使用が増える季節に発症しやすいため、保湿ケアをしっかり行うことが予防につながります。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い部位に炎症が起こる皮膚疾患で、頭皮や生え際、顔のTゾーンなどに赤みやフケのような症状が現れることが特徴です。
皮膚の常在菌であるマラセチアというカビの一種が増殖することが主な原因とされており、ストレスや気候の変化によって悪化することがあります。思春期から中高年にかけての男性に多く見られますが、女性にも発症することがあります。
貨幣状湿疹
貨幣状湿疹は、全身のさまざまな部位に、コインのような円形の湿疹ができる病気です。湿疹はカサカサした状態から始まり、進行するとジュクジュクした湿った状態になることもあります。強いかゆみを伴うことが多く、掻き壊すことでさらに症状が悪化しやすいのが特徴です。
乾燥肌の方や、アレルギー体質の方に発症しやすい傾向があります。長引くことが多いため、根気強い治療が必要となります。
接触皮膚炎(かぶれ)
接触皮膚炎は、特定の物質に触れることで皮膚が炎症を起こす疾患です。植物や金属、化粧品、薬剤、衣類などが原因となることが多く、触れた部位に赤みや水ぶくれ、強いかゆみが現れます。
アレルギー反応によるものと、強い刺激によるものがあり、原因を特定し、触れないようにすることが重要です。症状が軽度であれば自然に治ることもありますが、炎症が長引く場合は適切な治療が必要になります。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返される疾患で、皮膚のバリア機能の低下と免疫系の異常が関与しています。環境要因やストレスの影響を受けやすく、症状が改善したり悪化したりを繰り返すのが特徴です。
皮膚が乾燥しやすいため、適切なスキンケアを行いながら、炎症を抑える外用薬やかゆみを軽減する内服薬を使用することが重要です。症状が重い場合には、光線療法や注射薬による治療が選択されることもあります。
湿疹・手湿疹の治療
湿疹の治療では、まず原因となる物質を特定し、可能な限りそれを避けることが重要です。炎症が強い場合にはステロイド外用薬を使用し、症状を和らげます。かゆみが強い場合には、抗アレルギー薬の内服を併用することもあります。
通常、2~4週間程度で症状の改善が見られますが、それでも治りにくい場合には、光線療法や短期間のステロイド内服、免疫抑制剤を用いることがあります。湿疹は慢性化しやすいため、適切なスキンケアと治療の継続が大切です。