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アトピー性皮膚炎

湿疹を繰り返すアトピー性皮膚炎

湿疹を繰り返すアトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹を慢性的に繰り返す疾患です。皮膚のバリア機能が低下すると、外部からの刺激やアレルゲンに過剰に反応し、炎症が起こりやすくなります。特に、かきむしることでバリア機能がさらに低下し、症状が悪化する「負のスパイラル」に陥りやすいことが特徴です。
近年では、状態に応じた適切な治療法やスキンケアの重要性が明らかになり、新しい治療薬も登場しています。年齢や性別に関わらず、アトピー性皮膚炎でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

大人になってからアトピー性皮膚炎を発症するケースも

アトピー性皮膚炎は子どもに多い病気と思われがちですが、成人してから初めて発症するケースも珍しくありません。ストレスやホルモンバランスの変化(妊娠・出産、更年期など)によって皮膚のバリア機能が低下し、発症することがあると考えられています。
特に、大人になってから発症したアトピー性皮膚炎は治りにくいことがあり、早めの診断と適切な治療が重要です。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下によって外部からの刺激に対する免疫反応が過剰になり、炎症を引き起こす病気です。バリア機能の低下には乾燥が深く関与していますが、その根本的な原因はまだ完全には解明されていません。

アトピー性皮膚炎の主な症状

アトピー性皮膚炎の最も特徴的な症状はかゆみを伴う湿疹です。強いかゆみにより無意識にかいてしまい、炎症が悪化しやすくなります。

  • 皮膚のかゆみ・赤み
  • 皮膚のジュクジュクした状態
  • 皮がむける
  • かくと液体がにじみ出る
  • 皮膚が硬く、厚くなる(苔癬化)
  • 額、目・口の周り、耳、首、脇の下、肘・膝の内側に湿疹が出やすい

など

強いかゆみを放置すると、症状が悪化することがあるため、早めの治療が大切です。

アトピー性皮膚炎の3つの発症時期

乳児期

生後数ヶ月で発症することが多く、ほとんどの場合、2歳頃になると症状が落ち着く傾向にあります。湿疹は主に頭部、額、口の周囲に現れやすく、首や背中、下腹部にも広がることがあります。赤ちゃんの肌はバリア機能が未熟なため、乾燥や刺激に弱く、湿疹を繰り返しやすいのが特徴です。

幼児期・学童期

この時期は最も発症の多い年齢層で、2歳頃から首や肘・膝の内側に湿疹ができ始めることがよくあります。食物アレルギーが関与しているケースもあり、症状が悪化しやすいことが特徴です。しかし、思春期になると自然に症状が落ち着くことも多いため、適切な治療とスキンケアが重要になります。

成人期

成人になってからアトピー性皮膚炎を発症するケースもあり、再発型と新規発症型 に分かれます。
再発型は子どもの頃にアトピー性皮膚炎があり、一旦落ち着いた後、20歳以降に再発するものです。新規発症型は子どもの頃にアトピー性皮膚炎がなく、大人になって初めて発症するケースです。
特に成人後に発症したアトピー性皮膚炎は難治性のことが多く、適切な治療と根気強いケアが必要です。高齢になってから発症することもあります。

アトピー性皮膚炎の検査

アトピー性皮膚炎の診断では、症状の経過や家族歴、服用している薬、生活環境などについて詳細に問診を行い、必要に応じて血液検査を実施します。血液検査では、TARCやSCCA2の数値を測定し、炎症の程度や重症度を判断します。また、ダニやハウスダストなどのアレルギー反応を調べるために、特異的IgE抗体検査を行うこともあります。
アトピー性皮膚炎と似た症状を示す皮膚疾患(脂漏性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬など)との区別も重要なため、必要に応じて追加の検査を行い、正確な診断を行います。

アトピー性皮膚炎の治療・対策

アトピー性皮膚炎の治療は、重症度に応じた適切な方法を選択し、悪化要因の除去やスキンケアの改善を組み合わせることが重要です。

原因や悪化要因の除去・対策

原因や悪化要因として、アレルゲンやハウスダスト、ストレスなどが影響しているケースがあり、それらの対策を講じることで症状のコントロールがしやすくなります。環境因子ではホコリやカビ、ペットの毛が影響を与えることがあり、食物アレルギーによる悪化が見られることもあります。発汗やストレスも症状を悪化させる要因とされており、生活習慣の見直しも治療の一環として考えられます。

外用薬

外用薬としては、ステロイド外用薬や免疫抑制外用薬(プロトピック軟膏など)を使用します。ステロイド外用薬は炎症を抑える効果が高く、適切に使用することで副作用のリスクを抑えながら治療することが可能です。プロトピック軟膏は、ステロイドに頼らない治療として使用されることがあります。

内服薬

内服薬には、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬や、炎症が強い場合に短期間使用するステロイド内服薬があります。16歳以上の重症例では、免疫抑制薬(シクロスポリン)を用いることもあります。

注射薬

従来の治療で十分な効果が得られない場合、インターロイキン(IL-4, IL-13)の働きを抑制する注射薬を使用することもあります。

紫外線治療

紫外線治療(光線療法)は、塗り薬や内服薬で効果が不十分な場合に行われます。ナローバンドUVB療法を用いることで、免疫系の細胞の働きを調整し、炎症を抑えることができます。痛みを伴わず、保険適用で受けられる治療法であり、乾癬や円形脱毛症などの治療にも使用されています。

保湿剤

皮膚のバリア機能を回復させるために保湿ケアは不可欠です。ローションやクリーム、軟膏などを適切に使用し、入浴後すぐに保湿を行うことで皮膚の乾燥を防ぎます。低刺激の洗浄料を使用し、皮膚を優しく洗うことも大切です。

光線療法

光線療法は、紫外線の中でも特定の波長のみを照射し、皮膚の炎症を抑えて症状の改善を目指す治療法です。紫外線にはさまざまな波長がありますが、その中でも炎症を抑える効果が期待できる波長を選んで照射することで、皮膚の深い部分まで作用し、治りにくい皮膚疾患にも有効とされています。
アトピー性皮膚炎の治療では、スキンケアや外用薬が基本となりますが、これらの治療だけでは十分な効果が得られない場合や、症状が強く外用薬の使用量を減らしたい場合に、光線療法が選択されることがあります。光線療法を併用することで、皮膚の免疫反応を調整し、炎症を軽減することが期待できます。

スキンケアの注意点

アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が低下しているため、日常のスキンケアがとても重要になります。汗や皮膚の汚れは刺激となり、症状を悪化させる原因となるため、こまめに拭き取ることが大切です。
入浴時には、肌を強くこするのではなく、よく泡立てた石鹸の泡を手のひらにのせて、皮膚の上でやさしく転がすように洗います。ナイロンタオルなどを使用すると、摩擦によって皮膚が刺激され、炎症が悪化する可能性があるため避けるようにしましょう。
身体を洗う石鹸やシャンプー、洗濯用洗剤は、できるだけ香料や合成添加物が少ない低刺激なものを選ぶことが望ましいです。また、シャワーや浴槽のお湯の温度が高すぎると皮膚の水分を奪い、乾燥を助長してしまうため、少しぬるめと感じる温度に調整することが推奨されます。
入浴後は、乾いたタオルで肌をやさしく押さえるようにして水分を拭き取り、その後すぐに保湿を行います。皮膚が乾燥する前に適切な保湿をすることで、バリア機能を回復させ、かゆみや炎症の予防につながります。

新しい治療薬「デュピクセント」

デュピクセントは、アトピー性皮膚炎の炎症の原因となる「IL-4」と「IL-13」というタンパク質(サイトカイン)の働きを抑制することにより、免疫の過剰な反応を抑え、皮膚の症状を改善する新しい治療薬です。従来の治療で十分な効果が得られなかった中等症から重症のアトピー性皮膚炎の患者さんを対象とし、注射による治療が行われます。
この薬は、アトピー性皮膚炎の根本的な炎症のメカニズムに作用するため、これまでのステロイドや免疫抑制薬とは異なり、より持続的な効果が期待できます。
治療は、初回は院内で2本の注射を行い、その後は2週間ごとに1本の注射を継続します。継続的な投与が必要ですが、自己注射が可能なため、自宅での治療も可能となります。自己注射の方法については、医療スタッフが丁寧に指導を行うため、安心して治療を継続することができます。

デュピクセントを受けることができる方

デュピクセントの治療を受けることができるのは、中等症から重症のアトピー性皮膚炎と診断された方です。これまでにステロイド外用薬やプロトピック軟膏などの抗炎症外用薬を一定期間使用しても十分な効果が得られなかった場合に適応となります。
治療を受けるためには、15歳以上であることが条件となっており、デュピクセントの投与と併用しながら、引き続き外用薬や保湿外用薬による治療を適切に行うことが原則です。